天井裏から重い足音がする。畑のトウモロコシが、皮をむかれて食べられていた。
庭の池の金魚が、ある朝そろって消えていた。そんな被害の相手が、アライグマかもしれません。
この記事でわかること
- アライグマの見分け方と、屋根裏・畑・池での被害の特徴
- 自分で捕まえてよいのか(法律と自治体の制度)
- 自治体・業者への頼み方と、今日からできる予防
アライグマの駆除は、まず市区町村への相談から始めます。
わなの貸し出しや、講習を受けて捕獲に加わる制度がある自治体もあります。一方で、許可なく勝手に捕まえるのは原則として認められていません。
アライグマ駆除は3つの進め方がある
アライグマを捕まえて取り除く方法は、大きく分けて次の3つです。
| 進め方 | 内容 | 費用の負担 |
|---|---|---|
| 自治体に頼む | 市区町村がわなを置く、または貸す | 自治体が負担する例あり。条件つき |
| 講習を受けて自分で | 捕獲従事者として登録し、わなで捕る | わなは借りられる地域も |
| 業者に頼む | 捕獲・追い出し・侵入口ふさぎ・清掃 | 自己負担 |
自治体の制度は、地域によってかなり違います。住んでいる市区町村の環境課や農政課に、まず電話で確かめてください。
屋根裏にすみ着いている場合は、捕獲とは別に「追い出して、ふさぐ」作業も必要です。
まずアライグマかどうかを見分ける
屋根裏の動物は、ハクビシンやタヌキと間違えやすいもの。正体によって、相談先や法律の扱いが変わります。
見た目の違い
| 特徴 | アライグマ | ハクビシン |
|---|---|---|
| 顔 | 目のまわりに黒いマスク模様 | 額から鼻へ白い縦筋 |
| しっぽ | 黒い輪の縞が4〜10本 | 縞はなく、長い |
| 耳 | 白い縁取りが目立つ | 小さめ |
アライグマの大きさは、頭から胴で40〜60cm、体重4〜10kgほどです。
足跡とフン
足跡は、指が5本はっきり分かれた「人の手形」のような形です。
国の被害対策マニュアルでは、前足の跡は長さ5.5cm・幅6cmほど。かかとまで地面につけて歩くのも特徴です。
フンの形は、食べた物しだいで泥状から固形まで変わるとのこと。ハクビシンと違い、同じ場所にまとめて出す「ため糞」はしないとされています。
アライグマによる被害:屋根裏・畑・池
アライグマは雑食で、野菜や果物から魚、鳥、昆虫まで口にします。夜行性ですが、条件によっては昼間に動くこともあります。
屋根裏・床下
屋根裏や空き家に入り込んで、すみ着くことがあります。自治体が挙げる被害は、ふん尿による悪臭やカビ、家の破損や汚れです。
出産は4〜6月ごろで、1回に3〜6頭を産みます。春から初夏の屋根裏は、子育ての場所になっているかもしれません。
畑・家庭菜園・果樹
被害が目立つのは、トウモロコシ・スイカ・メロン・イチゴ・ブドウなど。食べ方に、アライグマらしい特徴が出ます。
- スイカ:直径5〜6cmの穴を開け、中身だけをくりぬいて食べる
- トウモロコシ:皮をむいて実を食べる
- 袋がけした果物:袋が破られ、まわりが前足の泥で汚れる
池の魚・ペット・ニワトリ
庭の池や水槽の金魚・メダカが食べられた被害も、自治体が報告しています。
国の防除ハンドブックには、ニワトリやウナギが食べられた例もあります。器用な前足で、冷蔵庫を開けて食べ物を盗んだ例まで書かれているほどです。
勝手に捕まえてはいけない理由
2つの法律がかかる
アライグマには、次の2つの法律が関わります。
- 鳥獣保護管理法:アライグマは狩猟鳥獣(狩猟で捕ってよいと国が決めた鳥獣)。捕るには狩猟免許や、捕獲の許可が原則として必要
- 外来生物法:特定外来生物(生態系などに被害を与えるとして国が指定した外来種)。飼う・運ぶ・放すことが禁じられている
ある自治体の案内には、こう書かれています。「特定外来生物ではありますが、無断で捕獲することは法律で禁止されています」。
鳥獣保護管理法に違反して捕まえると、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象になります。
免許がなくても捕獲に加われる制度
一方で、外来生物法には「防除」という仕組みがあります。都道府県や市区町村が計画を立て、アライグマを計画的に取り除くものです。
この計画のもとで講習を受け、市区町村に登録した人は、狩猟免許がなくても捕獲に加われます。いわゆる「捕獲従事者」です。
| 地域 | 講習の名前 | 案内されている内容 |
|---|---|---|
| 埼玉県 | アライグマ捕獲等従事者研修会 | 座学と実技でおおむね2時間。市町村で登録 |
| 茨城県 | アライグマ防除従事者講習会 | わな猟免許がなくても捕獲できる |
| 福岡県 | アライグマ防除講習会 | 18歳以上。箱わなで捕獲できる |
県の案内では、この制度で捕れるのはアライグマだけ。ハクビシンやタヌキがかかっても、捕まえておくことはできません。
自宅の敷地内の例外は、自治体で説明が違う
鳥獣保護管理法には、狩猟鳥獣についての例外があります。垣や柵で囲まれた住宅の敷地内なら、銃以外の方法で許可なく捕れるというものです。
ただし千葉県は、狩猟期間などの決まりがかかると案内しています。
無断での捕獲は法律で禁止されている、と案内する自治体もあります。
捕まえたあとの運び出しや処分にも外来生物法がかかるため、わなを置く前に市区町村へ確認してください。
自治体に相談するとできること
相談すると、次のような対応をしてもらえることがあります。内容は自治体ごとに違うので、例として見てください。
| 自治体 | 案内されている対応 |
|---|---|
| 板橋区 | 区の費用で箱わなを置く(原則1週間、最長4週間)。エサは利用者が用意 |
| 刈谷市 | 希望があれば捕獲檻を約1か月貸し出す |
| 座間市 | 捕獲の許可と箱わなの貸し出し。数と期間に限りあり |
このうち区の事業は、年度内1回まで。屋根裏への侵入か、敷地内の食害があることが条件です。
座間市は、目撃情報だけでは捕獲できないとしています。天井裏や床下に入られた場合は、業者に頼むよう案内しています(費用は自己負担)。
つまり、自治体が担うのは主に「捕獲」の部分です。侵入口ふさぎやフンの片づけは、自分か業者でやることになります。

相談するときに伝えること
電話の前に、次の点をメモしておくと話が早く進みます。
- 見た日時と場所(屋根裏の足音、畑、庭の池など)
- 被害の内容(食べられた作物、天井のシミ、池の魚)
- 足跡やフンの写真があるか
- 持ち家か借家か
講習を受けて自分で捕獲するときの注意
捕獲従事者として登録したあとも、決められた手順を守ります。国のハンドブックでは、次の点が示されています。
- エサは揚げパンやドーナツ、バターピーナッツなど、油や甘いにおいの強いもの
- わなは、目撃場所や侵入経路に入口を向けて置く
- 必ず毎日見回る。見回れない日は前日から扉を閉じておく
- 別の動物がかかったら、すぐに逃がす
わなを置いている間は、朝を中心に1日1回以上の見回りを求める自治体もあります。
捕まえたアライグマをどうするかは、計画ごとに決まっています。持ち帰ったり、別の場所で放したりせず、市区町村の指示に従ってください。
気性の荒さとかまれる危険、感染症
見た目はかわいらしくても、野生のアライグマは人になれていません。
近づかない・手を出さない
国の防除ハンドブックは「成長すると粗暴になる個体が多い」と書いています。
わなにかかった動物を扱うときも、かまれないよう取っ手を持つこと、という注意つきです。
作業には皮手袋が必須、とする自治体もあります。かまれたり引っかかれたりしたら、傷口を消毒して医療機関で診てもらってください。
感染症は国内の状況で考える
奈良県が平成23〜24年に捕獲したアライグマ30頭を調べると、10頭がレプトスピラ陽性でした。レプトスピラは、尿から広がる細菌です。
同じ検査で、アライグマ回虫は30頭すべて陰性でした。14年ほど前のデータなので、目安として見てください。
アライグマ回虫は、海外で人の重い病気の原因になる寄生虫です。ただし日本では、人への感染例は報告されていません。
狂犬病もよく名前が挙がります。ただ、国内で感染した例は1956年が最後です。
とはいえ、フンや尿に素手で触れないのが基本。片づけるときはマスクとゴム手袋を着け、終わったら手を洗います。
自分でできる予防:エサを断ち、入口をふさぐ
捕獲してもエサ場と入口が残っていれば、別の個体がやって来かねません。捕獲と予防は、セットで考えてください。
家のまわりのエサをなくす
- 生ごみは夜に外へ出さず、ふたつきの容器に入れる
- ペットフードの食べ残しを外に置かない
- 庭の果物は早めに収穫する。落ちた実も拾う
- 収穫しない野菜や野菜くずを、畑や庭先に捨て置かない
どれも自治体の案内や、国のマニュアルで挙げられている対策です。
屋根裏への入口をふさぐ
自治体の案内では、屋根裏の換気口を金網でふさぐよう求めています。屋根に届く庭木の枝も切っておくこと。
すでに入られているなら、先にふさぐのは禁物です。燻煙剤で追い出してから侵入口をふさぐよう、案内する自治体もあります。
ただし一般的な殺虫用の燻煙剤は、メーカーが天井裏での使用を認めていません。天井裏で使えると表示された製品を選び、使用上の注意を守ってください。
4〜6月は子育て中のことがあるので、先に自治体へ相談してください。子どもだけが残ると、中で死んでしまうおそれがあります。


2階の屋根まわりなど高い所の作業は、落ちる危険があります。はしごでの作業は、業者に任せたほうが安全です。
畑は電気柵、池は網で守る
国のマニュアルでは、アライグマ・ハクビシン向けの電気柵は地上5cmと10cmの2段張りです。
家庭菜園なら、県の研究機関が開発した「楽落くん」のような簡易な柵もあります。ネットの高さ30〜33cmに、細いリボン状の電線を5cm間隔で張る方式です。
電気柵を選ぶときは、次の点を見てください。
- 2段以上の線を低い位置に張れるか
- 畑の周囲の長さに合う本数の支柱と線が入っているか
- 電源が畑で使えるか(乾電池式・ソーラー式など)
- 人が触れないよう、注意の表示板がついているか
庭の池は、上を網で覆うよう自治体が案内しています。
忌避剤や超音波だけに頼らない
においや音でアライグマを寄せつけない効果を示した公的な情報は、見つかりませんでした。使うとしても、エサをなくす・入口をふさぐ対策と一緒にしてください。
業者に頼んだほうがよいケース
次のどれかに当てはまるなら、業者の調査を考えてもよい段階です。
- 屋根裏に入られていて、自治体は捕獲しかしてくれない
- 侵入口が2階の屋根など高い所にある
- 天井にシミが出ている、臭いが強い
- 自治体のわなの順番待ちが長い、または貸し出しがない
業者は、捕獲・追い出し・侵入口ふさぎ・清掃・消毒まで請け負うことがあります。アライグマを捕獲できるかは、業者の許可や地域の計画しだいです。
見積もりのときは、次の2点を聞いておくと安心です。
- 捕獲の許可や、地域の防除計画のもとで作業できるか
- 作業の範囲と、再発したときの保証
対応地域は業者ごとに違います。北海道など、対象外の地域もあります。

よくある質問
アライグマを勝手に駆除すると違法ですか?
許可や免許なく捕まえると、鳥獣保護管理法に違反するおそれがあるため要注意。自宅の敷地内の例外も自治体で扱いが違うため、まず市区町村に確認してください。
市役所に頼むと無料ですか?
わなの設置を無料で行う自治体があります。ただし侵入口の工事やフンの片づけは自己負担です。
捕まえたアライグマはどうなりますか?
国の方針では、できるだけ苦痛を与えない方法で処分することになっています。かわいそうに思えても、外来生物法で野外に放すことは禁止。
駆除したあとは何をすればいいですか?
屋根裏なら、侵入口をふさいで、フンや尿の汚れを片づけます。ふさいだ場所がこじ開けられていないか、ときどき外から確かめておくと安心です。
まとめ
- 特定外来生物でも、許可なく自由に捕まえてよいわけではない
- 自治体のわな貸し出しや講習の制度は、地域でかなり違う
- 捕獲とあわせて、エサをなくし入口をふさがないと再発しやすい
まずは足跡やフンの写真を撮り、市区町村の環境課か農政課に電話してみてください。屋根裏に入られているなら、追い出しとふさぐ作業の相談先も同時に探しておくと、あとが楽になります。
参考にした情報
- 環境省「アライグマ等防除ハンドブック 第1編」
- 環境省「アライグマ等防除ハンドブック 第2編(現地活動)」
- 環境省「アライグマ防除の手引き(計画的な防除の進め方)」
- 環境省「新法に基づく防除の公示一覧」
- 環境省「鳥獣保護管理法の概要」
- 環境省「狩猟鳥獣」
- 国立環境研究所 侵入生物データベース「アライグマ」
- 農林水産省「中型獣類の被害対策マニュアル」(生態・被害の特徴)
- 農林水産省「中型獣類の被害対策マニュアル」(侵入防止対策技術)
- 国立健康危機管理研究機構「アライグマ回虫による幼虫移行症」
- 厚生労働省「狂犬病」
- 奈良県「アライグマの感染症について」
- 埼玉県「アライグマ捕獲等従事者研修会について」
- 茨城県「アライグマ防除従事者講習会について」
- 福岡県「アライグマ防除講習会」
- 座間市「アライグマには要注意」
- 板橋区「アライグマ(特定外来生物)の被害について」
- 刈谷市「特定外来生物『アライグマ』にご注意ください」
- 千葉県「野生鳥獣の捕獲について」
- 姫路市「特定外来生物(アライグマ、ヌートリア)の防除」
